看護師は激務で離職率が高い、というイメージを持つ方は多いと思います。1年目で辞めたくなっている方、周りに「3年は続けなさい」と言われて悩んでいる方に向けて、最新のデータと現場の実態を整理しました。
「新人看護師です。もう限界です。辞めたいです。甘えでしょうか。頭に何も入ってきません。友人にも連絡を返せなくなり、何も楽しくありません」Yahoo!しごとカタログ
看護師の離職率は全職種平均より低い
「看護師は離職率が高い」というイメージがありますが、データで見ると実は全職種の平均より低い数字になっています。
2023年度の新卒看護師の離職率は8.8%で、前年の10.2%から1.4ポイント改善しました。コロナ禍で一時的に10%台に上がっていましたが、コロナ前の水準に戻っています。全職種の大卒1年目離職率10.1%と比較してもむしろ低い数字です。
病院の規模と地域で離職率は大きく変わります
離職率は病院の規模によって差があります。
| 病床数 | 新卒看護師の離職率 | 既卒看護師の離職率 |
| 99床以下 | 高め | 21.8% |
| 100〜299床 | 中間 | 17%前後 |
| 300〜499床 | やや低め | 15%前後 |
| 500床以上 | 8.0%(最も低い) | 13%前後 |
出典:日本看護協会「2024年病院看護実態調査」
規模が大きい病院ほど教育体制や福利厚生が整っているため離職率が低くなる傾向があります。500床以上の大病院の新卒離職率は8.0%で最も低い水準です。
地域別では都市部の離職率が高く、地方が低い傾向があります。東京14.2%、大阪13.7%、神奈川13.6%が上位で、岩手・山形6.8%、秋田7.4%が下位です。都市部は転職先が多いため動きやすい環境が背景にあります。
「離職率が高い」印象がある理由
離職率自体は平均的でも「看護師は辞める人が多い」というイメージが根強いのには理由があります。
看護師の有効求人倍率は2.37倍(2024年、厚生労働省「令和6年一般職業紹介状況」)で、全職種平均の1.25倍の約2倍です。つまり看護師1人に対して求人が2件以上ある状態で、慢性的な人手不足が続いています。
この人手不足のしわ寄せは、現場で働く看護師の業務量に直結します。日本医療労働組合連合会の2022年調査では、離職を考える看護師の半数以上が「人手不足で仕事がきつい」を理由に挙げ、3交替制・2交替制の勤務者では60%以上がこの理由を選んでいます。
1年目の看護師が辞めたくなる具体的な場面
新卒看護師が退職を考える理由としてよく挙がるのは以下のようなものです。実際に1年目で退職した方の体験談から、現場で何が起きているかが見えてきます。
- 覚えることが膨大で毎日勉強、帰宅後も深夜まで学習
- 先輩からの厳しい指導が続き、ミスするたびに自分を責める
- 急変時の判断のプレッシャーで常に緊張状態
- 夜勤明けも勉強、休日も疾患の学習で休めない
- 人間関係がぎくしゃくしてミスの相談がしづらい
- ナースコールの音に恐怖を感じるようになる
実際に1年目で退職した方のブログには、「毎日4時間の残業があり、日勤でも終電帰りだった」「ナースコールの音が怖くなって精神科で適応障害と診断された」「帰宅後も必死に勉強するのに翌日はまったく違う疾患を見なければならず、追いつかなかった」といった具体的な状況が書かれています。
1年目で退職すること自体は珍しくなく、入社3ヶ月、半年、1年といったタイミングで動く方が多いです。コメディカルドットコムの記事によると、1年目の看護師の約8割が一度は「辞めたい」と考えたことがあるとされています。
1年目で辞めるとキャリアはどうなるか
1年目で退職した看護師の実際の転職先は多様です。体験談として公開されているケースを見ると以下のような例があります。
| 退職時期 | 転職先の例 | 当時の状況 |
| 1ヶ月 | 眼科外来 | 「育ててくれる職場」を優先して選択 |
| 3ヶ月 | 有床クリニック | 総合病院の忙しさについていけず退職、教育体制重視で選択 |
| 6ヶ月 | 精神科病棟(慢性期) | 急性期が合わず、じっくり患者に向き合える環境へ |
| 11ヶ月 | 保育園看護師 | うつ状態で休職→退職、子ども好きを活かした選択 |
| 1年 | ホスピス・緩和ケア | 学生時代からの希望を諦めず転職 |
共通しているのは、前職で合わなかった要素(忙しすぎる、急性期のプレッシャー、教育体制の不足)を次の職場選びで補正している点です。1年未満の経験でも、看護師免許があれば職場の選択肢は想像より広くあります。
看護師免許を活かせる職場
病院以外でも看護師資格を活かして働ける場所は多数あります。
- クリニック(眼科・皮膚科・内科など日勤のみが多い)
- 訪問看護ステーション(患者と1対1でじっくり関われる)
- 介護施設・老人ホーム(急変が少なく落ち着いた環境)
- 保育園看護師(子どもが好きな方向け)
- 産業看護師(企業の健康管理室、土日休みが多い)
- 美容クリニック(未経験OKが多い、夜勤なし)
- 治験コーディネーター、医療機器メーカー、医療系ライター
夜勤がない、人命に関わる緊急対応が少ない、患者と1対1で関われるなど、前職の負担要因を避けた環境を選ぶ方が多くなっています。
1年目で退職するときに確認しておきたいこと
退職の前に押さえておくと後々の負担が減るポイントがあります。
- 奨学金の返還免除条件(病院奨学金は○年勤続が条件のケースが多い)
- 有給休暇の残日数(退職前に消化できるか交渉する)
- 退職後の健康保険の切り替え期限(14日以内)
- 転職先を決めてから辞めるか、先に辞めて休むかの判断
- 退職を言い出せない場合は退職代行という選択肢もあります
奨学金の返還免除条件は病院ごとに違います。返済義務が発生するタイミングで辞めると数百万円の返済を一括で求められるケースもあるため、就業規則や奨学金の契約書を事前に確認することをおすすめします。
転職エージェントは看護師にも無料で使えます
看護師専門の転職エージェントは全て無料で利用できます。転職する・しないを決めていない段階でも、求人情報の確認や担当者への相談だけでも価値があります。
第二新卒として動くなら、看護師資格を活かした求人だけでなく、未経験の職種に転じる選択肢も見ておくと視野が広がります。
今の職場で上司に退職を言い出しにくい、引き留めが強くて辞められないという場合は、退職代行という選択肢もあります。労働組合または弁護士法人が直接運営するサービスであれば、有給消化の交渉まで代行してもらえます。